宮本一郎さんの作品

『ブダペスト ~ 朝の散歩と午後のカフェ ~』

ブダペストの夜明け。まだ5時半だというのに昨夜着いたばかりで時差ぼけ"日本時間では昼!"の体はもう すっかり起きていた。ホテルの窓の正面にはブダの王宮、右に目を転じるとマーチャーシュ教会、そして、ドナウ川の両岸を結ぶセーチェーニくさり橋が朝日に 輝いている。雲一つない空。こんな日のブダペストの旅は朝の散歩から始めよう。

 ホテルから1ブロック、ルーズヴェルト広場を右に見ながら進むともうそこはくさり橋の袂、橋を護るライオンが出迎えてくれた。舌がないのではないかと論 議を呼んだそうだが、下から見上げただけでは真偽の程はよくわからない。日本では狛犬やシーサーに口を開けたのと閉じたのがいるのは話のタネになっても舌 のことまで気にしないのでは、と思うのだが。


くさり橋を護るライオン

全長375m、1849年完成のくさり橋はライトアップされた夜景が一番のお薦めとのことだが、陽の光の中 でも堂々としてドナウ川とブダペストの街によく似合っている。雄大なドナウの流れに少し感激しながら160年の歴史を刻んだ橋の上を歩く。ブダ地区側へ渡 り切った先は橋の建設監督の名を冠したアダム クラーク広場で、ハンガリー国内の道路の0km起点を示す道路元標が置かれていた。日本では東京の"日本橋"、スペインではマドリッドの"プエルタ デル ソル"に元標があるが、そんな観光スポットでもない風変わりなものを見つけるのも旅の楽しみの一つかもしれない。
 折り返してペスト側へ戻る途中クルーズ船に出会う。デッキから街を眺めている人達はここで下船して観光に繰り出すのだろうか。絶好のお天気の下、街中混雑の予感がする。


ドナウ川を下るクルーズ船

往復750mを渡り終えたら、ホテルを通り過ぎて、ヴルシマルティ広場へと足を伸ばす。カミさんの"この旅 でしたいことリスト"の上位に、『カフェ ジェルボーでエリザベート王妃"シシー"の気分になってケーキを味わう』が入っているからだ。老舗のカフェは広場の一辺の大半を占める重厚な構えで、張り 出したカフェテラスの前には地下鉄へ下りる古びた階段がまるで店の一部のように何の違和感もなく設えられている。残念ながらまだ開店時間前だったので、 ケーキは午後のお楽しみに取っておくことにした。


カフェ ジェルボー

ヴルシマルティ広場からドナウ川岸へ向かい、路面電車の軌道沿いの遊歩道をホテルへと戻る。途中、道の脇に 背もたれが王宮の丘に象られたベンチがあるのを見つけた。目を上げれば川の向うに背もたれどおりの景色が広がっている。ベンチの座席部分には点字で説明が 刻み込まれていた。ブダペストはそこを訪れる人に優しい街だ。


王宮の丘を象ったベンチ

ホテルでの小休止後観光本番ということで、英雄広場、マーチャーシュ教会や漁夫の砦でハンガリー1100年 の歴史に触れ、また、ゲレルトの丘からの眺望を楽しむ。説明を聞くにつれ、同じアジア系でありながらマジャール人について殆ど知らない自分の不勉強さが少 し恥ずかしくなる。昼食にはグヤーシュ スープや川魚の地元料理を美味しく頂く。

 午後のお茶の時間には約束どおりヴルシマルティ広場へ戻ってきた。シャンデリアに飾られたカフェ ジェルボーの店内は、19世紀の面影を残す落ち着いた内装に仕上げられている。巷での評判も高く混みあっているのではと心配したが、幸いスンナリと席を確 保でき一安心。お忍びでご来店のエリザベート王妃も食べたかもしれないケーキを味わいたいと、伝統のドボシュ トルタを注文する。カミさん大満足。余計なお世話だが、甘いケーキに囲まれていたシシーはダイエットに苦労しなかったのだろうか。マーチャーシュ教会の一 角で見つけた王妃の胸像はとてもほっそりしていたけれど・・・


ドボシュ トルタに大満足

ともあれ、カフェで心身ともにリフレッシュして、ブダペストの旅は午後の部へと続いていく!

(了)