山本正 康子さんの作品

ブダペスト個人旅行


ブダペスト東駅

私たちは既にリタイアした66歳の夫と63歳の私のシニア夫婦である。2年に一度くらいのペースで気ままな海外個人旅行を楽しんでいる。今回は街歩きをテーマにして気候の良い初秋に中央ヨーロッパを回ることにした。
 プラハ、ウイーンとそれぞれ味わいのある街を楽しみ、ウイーンから鉄道でわずか2時間半のブダペストにやってきた。ウイーンからの列車は東駅に到着す る。東駅はタクシーなどの客引きが多く、ブダペストの中で治安があまり良くない所という情報もあったので、簡単な英語しか話せない私たちには個人での移動 はハードルが高い。初日はインターネットで見つけた「日本語による個人観光ガイド」をお願いすることにした。
 ガイドさんとの待ち合わせは東駅ですんなりお会いできた。東駅は想像とは異なり、強引な客引きもなく、普通のヨーロッパのターミナルだった。用意された 専用車に乗り込み、市内の主な観光地をガイドしていただく。ガイドの女性はハンガリーの方だが、日本人と変わらない流暢な日本語でハンガリーの歴史を話さ れた。ヨーロッパ各国はいろいろな背景・歴史があるものだが、今は生粋のハンガリー人は少なくなってしまい、国土もかつては広大な平原の国だったそうだ が、その国土も随分狭くなったそうだ。もともとはアジア系とは聞いていたが街の人にはアジア系のイメージは少ない。でも手先が器用なことや、新しいものを 作りだしたり取り入れたりする国民性は日本人と似通った点もあると思いながらお話を聞いていた。
 案内はまずは英雄広場から始まり、高級レストランのグンデル、サーカス、動物園、宮殿のような外観の温泉などのある市民公園を廻り、かつて万博が開かれ た時につくられたというまっすぐなアンドラーシ大通りに出た。ここは緑の街路樹と重厚な建物が並んでいて、かつてはお金持ちの住居域だったとか。リストの 家やオペラ座も並んでいる。オペラ座の前には世界初の電化地下鉄があり、駅へ入ってみる。タイル張りと木材の内装で雰囲気がレトロでかわいらしい。電車も 旧型だがほのぼのとする地下鉄だ。東欧ということで日本にはあまり知られていない都市だと思うが、緑の多いきれいな街という印象を持った。

    
      英雄広場                                                                     


聖イシュトバーン大聖堂

明日は二人で街歩きをするので下見を兼ねて王宮にも行ってもらう。テレビなどで見たことのある漁師の砦のエ ピソードやマーチャーシュ教会の話を聞いて、今夜のホテルマリオットに向かった。ブダペストで一番楽しみにしていた夜景を眺めるため、たった2泊なのだが ホテルは1泊ずつ別々にとり、ドナウ川の両岸沿いにしたのである。マリオットホテルからは王宮、エリザベート橋、鎖橋がよく見える。夜景が楽しみだ。この ままずっとドナウの風景を見ていたいほどだったが、先ほど聖イシュトバーン大聖堂を見学したとき、夕方聖堂内でパイプオルガンコンサートがあることを知っ た。とても立派なパイプオルガンだったので、聴きに行くことにした。歩いてすぐだ。バッハのトッカータとフーガから始まり、聖堂内は音響がよいのか思いの ほか大きな音でびっくりした。
 思いがけず聖堂でのパイプオルガン演奏を楽しみ、夕食は有名なカフェジェルボーのビアレストランでとる予定だったが、テラス席のみの営業とのことで、日 本人である私達にはなじみのないテラス席での食事はパスし、近くのカフェレストランでハンガリー料理を楽しんだ。ただマリオットホテルにしてもこのカフェ にしてもサービス業にしては笑顔がない。旧体制の名残なのかとも思う。
 夜景は王宮、教会、橋のライトアップのセンスがよく、すばらしい眺めを楽しめた。

翌朝は真っ青な晴天だった。ドナウ川の昼間の景色も素晴らしい。
 この日は、日本でインターネット予約した国会議事堂の見学ツアーから始まる。国会は宮殿のような美しいつくりだ。ホテルに迎えが来て、まずは議事堂近く の自由広場を見学。周囲は銀行、アメリカ大使館など重厚で美しい建物が囲む。国会ツアーは人気があるようで沢山の人が列を作っていた。内部は豪華な作り で、本物の王冠も警備の人に見守られながら間近に見ることができた。
 議事堂の前はトラムや地下鉄が走っている。街歩きは、まず地下鉄とトラムを乗り継いで自由橋のたもとにある中央市場に行くことにした。この市場の屋根もマーチャーシュ教会と同じタイル工芸の建物だそうだ。


国会議事堂                                              国会内部

建物内は広く、市場にしてはとても清潔でパブリカ屋、八百屋、ハムなどの肉屋、フォアグラ店などが何軒も並 んでいる。豊富な商品だ。2階にはお土産用にハンガリー刺繍の店が並ぶ。かわいい刺繍のついたドレスを孫娘のために購入した。その後は便利な地下鉄・トラ ムを使い、オペラ座見学や街歩きを楽しみ、鎖橋近くのホテルにチェックイン。ここからは鎖橋はもちろん、国会議事堂やブダペストの街並みがよく見える。
 鎖橋のたもとに、ガイドさんの説明ではシシーが造らせたという木造のケーブルカーがある。確かにレトロな木箱型のつくりで、見るだけでも楽しいケーブルカーだ。これに乗れば眺めも良いし、王宮への坂を歩かなくてすむ。
 王宮からの眺めは素晴らしく、ブダペストの街の向こうに大平原が 広がっている。ドナウ川もゆったり流れ、のどかな気持ちになってくる。小さなヘレンドの店でうさぎ年の孫娘のためにうさぎの取っ手のついた小物入れを購 入。刺繍のドレスとともにハンガリーの記念として良いお土産になった。
 街歩きを楽しんだ後、夕食は地元の人が集まるレストランでとった。沼や漁師の壁絵が描かれたお店で、ハンガリーの雰囲気が楽しめた。
 ホテルからの夜景はもちろん素晴らしかった。
 翌朝目覚めると、川の向こうに聖イシュトバーン大聖堂が朝日を背に受けてきれいなシルエットになっている。影絵を見ているようだ。しばらくすると太陽が 聖堂から昇り、まるでダイヤモンドのように輝いた。偶然ではあろうが、荘厳なシーンを見ることができ、平和に感謝しつつしばらく見とれていた。
 トラム、地下鉄を乗り継ぎ東駅へ向かう。東駅では次の街へ向かう列車を待つ間、駅前のベンチで日向ぼっこをするくらい、くつろいだ気分になっていた。なぜか懐かしくなる街ブダペスト、再訪を誓う。


                     中央市場                                 ケーブルカーから鎖橋と市街を望む