フンガリクム

ハンガリーなるもの フンガリクムという言葉の解釈は人によってまちまちです。多くの人にとってはハンガリー的なものという意味であり、例えばグヤーシュスープ、大平原の向こうの蜃気楼、軽騎兵などを指します。また別の人々はより厳密に、ハンガリー国内で生産される高品質な商品と考えます。

例えばトカイ・ワイン、ツヴァツク・ウニクムといったものです。前者の意味では、理解あるいは習得できる人が大変少ない、固有で複雑な「暗号」であるハンガリー語こそ、フンガリクムの頂点であり、第1級の結束力を意味し、民族アイデンティティの第1の源なのです(ハンガリーに行って、ハンガリー語の単語を12つ話してみた時、どんなにポジティブな反応が返ってくるかよくご覧下さい)。

もう1つの言葉はそれほど秘密めいたものではなく、ハンガリーの民族音楽とクラシック音楽です。ハンガリー人は疑いようもなく高い聴力に恵まれており、コダーイとバルトークが見いだし、創意に富んだ編曲を創り上げた、古い民謡であれ、10才の神童が演奏するジプシー音楽であれ、リスト、バルトーク、リゲティとその先達および後進によるハンガリーのクラシック音楽であれ、それは変わりません。そして民族舞踊と刺繍のような手芸品も民族の魅力を披露する力を有しています。また地方の風習、固有種の鳥や動物もフンガリクムの1つでしょう。

年配の方には1950年代のサッカー選抜チーム、プシュカーシュに率いられた「ゴールデン・チーム」もフンガリクムの1つに挙げるかもしれません。若い人ならルービック・キューブやノーベル賞受賞の科学者や作家を考えるでしょう。しかしそれ以上に多くの人がフンガリクムと考えるのは、ハンガリーのグルメです。辛さと美味しさ、時にはこってりとした味ですが、いつも抗うことができない料理、例えばグヤーシュ、ハラースレー、レチョー、ラーンゴシュ、ショムローイ・ガルシュカなどを、ヴィッラーニやトカイあるいは他の産地の素晴らしい、フルボディの赤ワインまたは白ワインと一緒に、それともパーリンカで

この通りフンガリクムを挙げればきりがありません。皆様のためにできること、それは最も容易に入手できるもの(ですから、いきなりハンガリー語の文法を教えたりはしません!)、皆様の五感に訴えるものをお勧めすることです。ハンガリーの本当の味覚を楽しんで下さい。

フォアグラ

Libamáj

Goose liver (ガチョウのようにお気楽に)

ハンガリーは世界最大のフォアグラ輸出国です。約30,000のガチョウ飼育業者がおり、動物愛護団体の途切れることのない抗議を受けながらも、伝統的な強制給餌を行っています。

この種のガチョウ飼育方法はハンガリーでも10年以内に禁止されるとも言われており、飼育業者はそれに代わる肥育方法を考え出さなければなりません。ですから、この美味なるフンガリクム(ハンガリー特産品)を今のうちに味わってみてはいかがですか?

セゲドのウィンター【冬サラミ】とブダペスト

Téliszalámi

冬でも夏でも春でも秋でも、その次の冬にも

山へのハイキングのお供にセゲド[Szeged]のピック・サラミ[Pick szalámi]を持って行く時、あるいは朝食にスモーク・ウィンターサラミ(ドナウ河岸のブダペストの地域の局地的気候の下製造されます)のサンドイッチを食べる時、おそらくサラミを作る時の様々な規則や注意点について考えることはないでしょう。

特別な「サラミ用の豚」は100年の伝統をもとに飼育されており、サラミ製造の全ての段階で入念に温度管理されており、厳選されたスパイスが用いられて等々。召し上がる時にそうしたことを考える必要はないのです。ただひたすらサラミを味わってください!

セゲドとカロチャのパプリカ

Szegedi és kalocsai paprika

エルーシュピシュタ

深紅のパプリカは、そのままでもパウダーでも、辛いものでもマイルドなものでも、全てハンガリー料理のシンボルです(そして科学者セントジェルジ・アルベルトはパプリカからビタミンCを発見し、1937年にノーベル賞を受賞しています)。

セゲドとカロチャで生産されるパプリカは、世界でも最上級のものとされており、カナダ、アメリカから日本まで全世界で愛用されています。ハンガリー・パプリカはエルーシュ・ピシュタ[Erős Pista]あるいはピロシュ・アラニュ[Piros Arany]といったペーストとしても親しまれています。あまりの美味しさに、これ無しにはいられなくなるかもしれませんから、どうぞ取り扱いにはご注意下さい!

ウニクム

Unicum

次の方どうぞ!

外国の方はウニクムを最初に飲んだ後、大抵黙ってしまうものです。ハンガリーのスピリットを体現する代表的な飲み物だというのに。

苦い体験、そしてこのツヴァツク[Zwack]一族秘伝の薬草のレシピで作られた、焦げ茶色の油くさい飲み物について最終的な審判を下す唯一の方法は、時にはビールと交互に飲んだり、食事の前と後、あるいは他の全ての状況で何度も試した後でのみ可能です。

ハンガリー人によればこれは薬以外の何者でもありません。23杯飲んだ後に、次は何が来るのか考える余裕があるのならば、この伝統的な飲み物の最も新しい(1部の人によると異端の)バージョン、ウニクム・ネクスト[Unicum Next]を頼んでみてはいかがでしょうか。

レースの刺繍

Csipke

レースが生まれる土地

ハンガリーのレースは輝かしい歴史を誇ります。代表的なものの1つはチェトネクのレース[Csetneki csipke]であり、その源流はアイルランドのレースにまでさかのぼることができます。もう一つのハラシのレース[Halasi csipke]は、独創的なテクニックの産物であり、型紙、針と糸だけで製作されます。カロチャの刺繍も幾つかの特殊なステッチでレースとすることができます。ところでレースの製作はリラックスするのにうってつけだと言うことはご存じでしたか?ぜひおためし下さい!

ハラシのレース

Halasi csipke

レースの女王

ハンガリーにはレースの伝統があります。19世紀まではボビンレースが主流でしたが、1902年にキシュクンハラシ[Kiskunhalas](あるいは単にハラシ)の街で、1人のデザイナーが、母親と友人の力を借りて、全く新しいレース製作方法を創り上げました。その新しい方法によるレースは、型紙、1本の針、そして糸だけを使い、全く独自の技術で作られます。ハラシレースは「レースの女王」と呼ばれ、ハンガリー特産の手芸品であり、いわば現代の技術進歩と民族芸術が合わさってできた産物なのです。

カロチャ〜美しい民芸品と絵画

Kalocsai hímzés

伝統芸能の粋

カロチャの刺繍は、ハンガリー手芸品の珠玉の1つです。伝統的な方法では下絵を手書きし、様々なステッチが用いられ、1つの作品に1度として全く同じモチーフは現れません。この地域には壁面の装飾【ピンガーラーシュ pingálás】という古い伝統も誇りにしています。これは牛乳に溶かした粉末塗料で描かれます。女性たちが、部屋やキッチンの白壁の上部へ帯状に、色とりどりの花、主にバラとチューリップを、あるいは小鳥を下書きせずに描きます。ぜひカロチャを訪れて、この芸術的作品による女性的な世界をご覧になって下さい。

マチョーランド

Matyó

濃密な刺繍

北東ハンガリーのマチョー刺繍もまた代表的なハンガリー伝統民芸品です。マチョーランドの首都メゼーケヴェッシュド[Mezőkövesd]を中心に生産されていますが、伝説によるとマーチャーシュ王にちなんで名づけられたとか。代表的なモチーフはバラの花。衣装一面に刺繍された作品は芸術の域と言えます。マチョー刺繍伝統的な手芸品の文化を守るため2012年に世界無形文化遺産に登録されました。

プリ

Puli

モップと間違わないように!

ハンガリーの牧羊犬でも古い犬種です。中型犬で、独特なモップの様な毛を持つ犬です。活発で陽気、飼い主に大変忠実です。賢いため学習は早いですが、その反面自分の意志をしっかり持っています。

現在のハンガリーの地へ移動してきた最初のハンガリー民族とともに連れてこられたと言われていますが、第2次世界大戦時に絶滅寸前にまでなりました。特殊な繁殖プログラムで種として生き残ることができました。

ハンガリーの灰色牛

Magyar szürke marha

ハンガリー特産の灰色牛は、がっしりとした体格で、落ち着いており、飼育しやすく寿命の長い動物です。上に向かって伸びた角は長く、反っています。9世紀にハンガリー民族と共に大平原へやって来たとも言われています。今日では主に国立公園内で観光客向けに飼育されており、ご覧になれば、どうしてこの名前が付けられたのかはすぐに判るでしょう(ヒント:毛皮の色をご覧下さい)。

ヘレンド

Herend

世界に誇る磁器

ヘレンドは日本でも有名なハンガリー3大磁器メーカーの1つです。その歴史にはロンドン、ニューヨーク、パリの万博での表彰という輝かしい業績が刻まれています。

品質の高さは、ヴィクトリア英国女王やフランツ・ヨーゼフI世からの大量の注文からも見て取ることができます。以来その品質は全く衰えることを知りません。手作業で彩色されたヘレンドの製品をお求めの方を、幅広い品揃えを誇る市内複数のヘレンドショップが心よりお待ちしています。

ハンガリーの伝統音楽

Magyar népzene

さあ、皆さんも!

ハンガリーの民族音楽は、様々なスタイルと形式で私たちの前に現れます。幾つかの古い歌は(これらの歌と初めてであった機会が映画『イングリッシュ・ペイシェント』であったという人も少なくありません)、周辺の国々、例えばルーマニアやスロヴァキアの民族音楽の1つの要素となり、またジプシー音楽のある部分を担います。

20世紀前半に数千の民謡が収集されたのは、ハンガリーの誇る作曲家バルトークやコダーイの業績でした。そしてシェベシュチェーン・マールタ[Sebestyén Márta]やパヤ・ベア[Palya Bea]といった専門の歌い手がその伝統を守り育てています。そしてそれらが現代ハンガリー芸術の中に取り込まれていくのです。

民族舞踊

Néptánc

あなたも「チャールダーシュの女王」に!

ハンガリーの民族舞踊は豊かな伝統を持ち、1960年代に再発見されて新しい生命を吹き込まれました。その時始まった「ターンツハーズ(ダンスの家)」運動では、専門家と初心者が一緒になって生演奏に合わせて踊ることができます。この全国に広がる「ダンスの家」運動はコミュニティーにおける教育や文化の上で評価され2011年世界無形文化遺産に登録されました。

誰でもチャールダーシュやエネルギッシュなチャーンゴーの踊りやジプシーの踊りを学ぶことができますし、有名な民族音楽グループ・ムジカーシュの演奏で踊ることができました。こうしたターンツハーズはこれまでの観光案内ではあまり紹介されることがありませんでしたが、だからこそ現地の生活や文化を知る素晴らしい機会となるでしょう。

ブショーヤーラーシュ

Busójárás

ハンガリーの「なまはげ」(2009年世界無形文化遺産登録)

ブショーヤーラーシュは秋田のなまはげによく似た南ハンガリーのモハーチ地域独特な冬のお祭りで、キリスト教の「灰の水曜日【復活祭の46日前で四旬節の初日にあたる】」の1週間前に行われます。その"メインイベント"は恐ろしいブショー[Busó]と呼ばれる魔物に扮した人々で、角のついた恐ろしい面を付け、ケレプルーという鳴子に似たものを手に持ち、冬とオスマン帝国の記憶を追い払います。かつてハンガリー軍に襲いかかろうとするオスマン帝国軍に、この面を付けた現地の人々が攻め込んだのでした。

言い伝えによれば、近づいてくる「魔物たち」を見たオスマン帝国軍は当然のことながらパニックに陥り、逃げ出したとのことです。今日では子どもたちを連れて、女性を追いかけていたずらをしますが、単なるお遊びであり、心配することはありません。それよりも行列に加わって、伝統的な民俗音楽とスパイス入りのホットワインを楽しみましょう。

ルツァ

Luca

我が名はルツァ

ルツァのネームデーは1213日です。ルツァ【ラテン語の女性名ルキアに相当。イタリア語ならルチア】は、魔女の名前でもあり、聖人の名前でもあります。なぜなのかは判りませんが、このネームデーは魔女を追い払う風習の日とされています。この日には火をつけること、縫い物、織物、糸紡ぎをしてはならず、一方で「ルツァの椅子」を(椅子というより腰掛けなのですが、9種類の異なる木を使わなければなりません)作り始め、毎日毎日少しずつ、クリスマスに完成させます。

クリスマスにルツァの椅子の上へ立つと、どんな人混みの中からでも魔女をすぐに見つけ出すことができると言われています。そしてその後すぐに走っていって、ルツァの椅子を火の中に投げ入れます。なぜならルツァの椅子の持ち主が魔女に見つかってしまうと、ばらばらにされてしまうからです。

レグレーシュ

Regölés

クリスマスのおまじない

ハンガリーのクリスマスは、平均的なヨーロッパのそれと似ていますが、少し違う部分もあります。飼い葉桶の中の幼子イエス、東方3博士、クリスマスツリーなどは同じですし、プレゼントも1224日です。しかしそのプレゼントを持ってくるのはサンタクロースではなくミクラーシュで126日にやってきます。

独特な風習として「ベツレヘムの羊飼い」(子どもたちが近隣の家を訪れて、聖家族の出来事をユーモア交えて演じます)そして年末のレグレーシュがあります。子どもや若者が、近隣の家を訪れ、よい新年となるよう願い事を唱え、鈴付きの杖やフルヤと呼ばれる笛で音楽を奏で、また娘や青年に幸せな結婚となるよう助けるためにおまじないをかけるのです。

イースターのお祝い

Húsvéti ünnepek

春の風習・「ロチョルコダーシュ」

復活祭の数日前、女性と子どもは様々な色と模様のイースターエッグをつくりますが、中には芸術品とさえ言えるものものあります。復活祭の月曜には子どもたちはベッドの中にプレゼントを見つけ、卵、ハム、カラーチと呼ばれるパンなど伝統的なイースターの朝食をすませた後は、ロチョルコダーシュ【水浴びせの意】と呼ばれる風習が続きます。

かつては大きなバケツに入った水を、若い娘たちにかけたものですが、今日では香水に代わりました。男性は香水をかけるのと交換で、赤いイースターエッグを求めますが、その時まず先にできる限りおかしい「水浴びせの詩」を唱えなければなりません。ブルルルそうですこれを私たちは今でもやっているのです